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味間いも

奈良県磯城郡田原本町
藤高農園
藤高祥雅さん
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畑で手を動かす人の手元
風景写真
食材写真

大和の田園地帯を走ると、季節の色が少しずつ変わっていくのがわ かる。その変化の中で、ふと足を止めたくなる場所がある。奈良県 磯城郡田原本町・味間。昔から、ここには “土地の味” が息づいている。 この地で受け継がれてきた伝統野菜「味間いも」。土から掘り出され たばかりのその姿を見ていると、まるで地域の人々が紡いできた時 間が、ひとつの芋のかたちになったようだと思えてくる。

藤高祥雅さん

味間いもは2014年に奈良県より「大和野菜」の 認定を受け、藤高さんら「田原本町味間いも生 産者の会」のメンバーが中心となって、伝統野 菜のブランド化と伝承に取り組んできた。

作業の手元
豚舎の写真
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肉のカット

味間いもの収穫は10月下旬頃から始まる。藤高さんは今年の出来栄えを確認しながら、 もくもくと1株ずつ丁寧に掘り起していく。

未来へつなぐ、土地の味

土地と水が育む白くて粘りのある宝もの

間いもは、切った断面が雪のように白く、指に吸いつくほどの強い粘りが特徴だ。ねっとりと舌の上でほどける食感と、後からじんわり広がる奥深いコクは、一度味わうと忘れられない。昭和のはじめ、行商に出かけた先でそのおいしさが評判を呼び、味間の名は少しずつ広がっていった。名月の夜のお供えや、冬の煮物や汁物、正月の大和雑煮や「のっぺい」に欠かせない存在として、昔も今も季節の行事に寄り添う静かな主役である。さらに、この味わいは土地の恵みによって支えられている。味間の一帯には四つの川が流れ、生活排水の影響が少ないため、水は驚くほど澄んでいる。味間の土壌はサトイモづくりに適しており、同じ種芋でも砂地で育てたものとは味がまったく異なる。きれいな水と重みのある土、そして静かに積み重なった営みが、味間いもというひとつの味わいを形作っている。

高さんの手間ひまと愛情がつなぐ伝統

この伝統を今も支えているのが、藤高農園の藤高祥雅さんだ。かつて7軒あった農家は高齢化で今や3軒。そんな中、藤高さんは小さな畑を丁寧に耕し、種芋を周囲の農家に渡すことで生産者を増やす取り組みを続けている。サトイモは連作ができず、寒さにも弱いため、毎年畑の場所を変え、冬には藁とマルチで守り、夏には溝を切って水を通す。ひとつひとつの手間が、味間いもの“おいしい記憶”を未来へつなぐ愛情となっている。藤高さんはただ作るだけでなく、土地や水、土との向き合い方を大切にしている。芋を収穫して水で洗うと、土が気持ちよさそうに離れ、芋自身が育った場所の記憶を伝えてくる。こうした営みが、味間いもの深い味わいを形作るのだ。

土地の記憶を伝える一粒

農産物直売所「まほろばキッチン橿原店」や「道の駅レスティ唐古・鍵」では、生産者の名前入りの専用袋で味間いもが販売されている。手に取る人に、誰がどんな思いで育てたのかを伝えたい――そうした小さな工夫も、伝統を守る大きな力となっている。古代から受け継がれ、地域の食卓を支えてきた味間いも。澄んだ水と豊かな土、そして人々の手間ひまが作るこの味は、これからもこの土地の風景のように静かに、確かに、未来へと残っていくだろう。藤高さんや地域の人々の思いが積み重なった一粒一粒は、単なる食材ではなく、土地の歴史と文化そのものを伝える宝ものなのだ。

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Ingredients and Producers

食材と生産者の紹介

奈良の食は、千三百年を超える歴史と、山・水・森に抱かれた豊かな自然の中で、静かに、確かに育まれてきました。味間いも、ばあく豚、吉野本葛、原木椎茸、日本酒 ―ご紹介する食の一つひとつには、気候風土を読み解き、自然や命と対話しながら手をかけ続けてきた作り手の哲学と誇りがあります。 本記事では、奈良の食が生み出される背景、そして生産者の声を丁寧に紡ぎました。奈良の食の物語と、プロのシェフたちが生み出す一皿によって、皆さまの食卓が笑顔あふれるものになりますように。